ピアノの調律のときに、「ピッチはどうしますか?」「ピッチは442ヘルツでいいですか?」と調律師の人に聞かれたことがあるという方、いらっしゃるかもしれません。
ピアノ以外の楽器をしたことがあるという方なら、わかると思いますが、恐らくピアノを習っていたという方でも、なんのことかわからないのではないでしょうか?
よく聞くピッチは、442、441、440Hzというところだと思います。
この中で、正解はどれなのでしょうか?
ピッチとはなんなのか、温度や湿度によって変化したりするのかなど、ピッチについて掘り下げていきたいと思います。
今回は、ピアノの調律のピッチのヘルツとは?442・441・440Hzに温度湿度で変化する?と題してお届けします。
目次
ピアノの調律のピッチのヘルツとは?
まず、一般的なピッチとは、音の高さのことをいいます。
ピアノの調律のピッチとは、音を合わせる時の基準となる音の周波数のことをいいます。
ピアノの基準音は、中央の「ラ」の音です。
その「ラ」の音が、440~442ヘルツの周波数で、「ラ」の音を基準にピアノを調律をしていきます。
ヘルツ(Hz)とは、周波数(音の高さ)の単位です。
ちなみに、この「ラ」の音は、NHKなどの時報音(プ・プ・プ・プー)の音であったり、産まれたときの赤ちゃんの最初の産声は、世界共通で「ラ」の音だといわれています。
「ドレミファソラシ」の音名は、イタリア語です。
英語の音名は、「CDEFGAH」です。
「ラ」の音は、英語音名で「A」。
アルファベットの最初の文字で、偶然にも、赤ちゃんの産声と何か関係がありそうな気がしましたが、特に何もないようです(笑)。
なぜ440~442ヘルツで調律しているのか?
一般のご家庭のピアノを調律する際は、ピッチ指定されることはほとんどありませんが、なにか特別な事情がない限り、A=442Hz(ヘルツ)で調律することが多いです。
なぜ442ヘルツで調律するのかというと、コンサートホールでのピアノや、オーケストラなどのピッチは、おおむね442ヘルツでピッチをとっていることが多いからです。
しかし、ユニバーサルピッチといって、1939年にロンドンで開催された国際会議で決定された周波数は、A=440Hzとなっています。
周波数は、数字が大きくなれば、高い音になるので、ユニバーサルピッチは、若干低いピッチですね。
なぜ、オーケストラなどでのピッチは、ユニバーサルピッチの440ヘルツではなく、442ヘルツを基準としていることが多いのかというと、ピッチが高い方が華やかに聞こえるからだと言われています。
ご家庭のピアノではどのピッチが正解?
ユニバーサルピッチは、440ヘルツ、一般的に主流とされるピッチは、442ヘルツ、どれが正解なのかというと、正解はありません。
ご家庭の調律では、だいたいのピアノは、442ヘルツで調律していますが、お客様からピッチ指定が特にない場合は、少し低めの440ヘルツや441ヘルツで調律することもあります。
前回の調律から、年数が空いてしまっている場合、古いピアノの場合は、ピッチがかなり下がっていることが多いので、できるだけピアノに負担をかけないように、低めのピッチで調律します。
一気に音程を上げてしまうと、弦が切れてしまう可能性など、ピアノに負担がかかることがあるので、440ヘルツよりも低めにすることもあります。
ジャズを弾く方は、440ヘルツにこだわっていたり、声楽をされている場合、441ヘルツや444ヘルツといったピッチで指定されることもあります。
また、バイオリンなどの楽器をされている方は、特に指定がなくても、442ヘルツで調律します。
結局どれにすればいいかは、楽器などを特にやっていない場合は、お好み、もしくは調律師におまかせでいいと思います。
ピッチの歴史
現代では、440~442ヘルツが主流となっていますが、時代をさかのぼってみると、違う周波数が使われていました。
1859年(ロマン期~中期)、パリの国際会議で、A=435Hzと定められていて、国際高度といっているようです。
このピッチだと、まあまあ低いですね。
1859年というと、日本では、江戸時代で幕末あたりにあたります。
ヨーロッパなどでは、ピッチの会議が開かれるほど、昔から音楽が盛んだったことがわかります。
その後、華やかな音響を求めるべく、A=435よりも高いピッチでとるようになっていきます。
1939年、ピッチを揃えるために、ロンドンの国際会議でA=440Hzを、新しい基準として定められています。
これが、現在のユニバーサルピッチとなっています。
1939年というと、和暦だと昭和14年で、第二次世界大戦がはじまった年です。
やはり、音楽をしている人たちは、上級国民として、戦争に参加することもなかったのでしょうか?
そのような世の中で、ユニバーサルピッチが決定されていたようです。
そして、現在も公式では、このピッチが標準とされています。
しかし、現在は圧倒的にA=442Hzでピッチをとっていることが多いので、そろそろ、国際会議をした方がいいと思うのは、私だけでしょうか?
ちなみに…というお話を少しさせていただきますと、私、実は「雅楽(ががく)」という日本の伝統音楽の、演奏活動に少し参加しております。
(兄が雅楽演奏家・講師しています。詳細は、山口創一郎で検索を…。)
雅楽のピッチは、現在、A=430Hzで標準化されていて、西洋の音楽のピッチよりも、かなり低いピッチで演奏しています。
そんな雅楽のピッチですが、昔は、西洋の音楽とは逆に、高めのピッチで演奏していたという説もあるようです。
ピアノの調律のピッチは442・441・440Hzに温度湿度で変化する?
ピッチについて説明したところで、ピアノの温度湿度変化によるピッチの影響について、っ紹介したいと思います。
どんな楽器でも、温度湿度の変化によって、ピッチは変化するものです。
一般的に、温度が上がると、ピッチは低くなり、温度が下がると、ピッチは高くなります。
湿度は、湿度が上がると、ピッチは高くなり、湿度が下がると、ピッチは低くなります。
もちろん、その変化はピアノも同じです。
温度に関して言えば、吹奏楽などをやっていた方は、よくわかることかなと思います。
どのぐらい変化するのか
どのぐらいピッチが変化するのかというと、ざっくりというと、温度が10度ぐらい上がると、ピッチは1ヘルツぐらい下がり、逆に10度ぐらい下がると、1ヘルツぐらい上がります。
湿度が10%上がると、ピッチは約0.5~2ヘルツ上がり、湿度が10%下がると、0.5~1ヘルツ下がる傾向にあります。
なぜ温度湿度が変化するとピッチが変化するのか?
なぜ、こんなにピッチが上下するのかというと、温度や湿度が変化すると、ピアノの響板が膨張、収縮するからです。
ピアノの響板とは、ピアノのスピーカーの役割を担っている大きい木材部品で、この響板がないと、ピアノは大きな音が響きません。
ピアノの木材は、「シーズニング」といって、木材を天然乾燥と人工乾燥を繰り返して、木材の狂いなくす作業をします。
しかし、響板は、エゾマツやスプルースといった、柔らかい弾力のある木材を使用していますので、温度や湿度の変化が大きいと、伸び縮みします。
ピアノの調律のピッチのまとめ
いかがだったでしょうか?
ピアノの調律のピッチとは、音を合わせる時の基準となる音の周波数のことをいいます。
現在、日本で最も使用されているピッチは、A=442Hz(ヘルツ)です。
しかし、国際会議で決めれられた、ユニバーサルピッチは、A=440Hzとなっています。
ご家庭での調律は、442ヘルツでとることが多く、ピアノの状態や、お客様のご希望や、ピアノの状態によっては、441ヘルツや440ヘルツで調律することもあります。
そして、温度や湿度が変化すると、ピッチも変化し、温度が上がると、ピッチは下がりやすく、温度が下がると、ピッチは上がりやすくなります。
一方、湿度が上がると、ピッチは上がりやすく、湿度が下がると、ピッチが下がりやすくなります。
以上、ピアノの調律のピッチのヘルツとは?442・441・440Hzに温度湿度で変化する?と題してお届けしました。