ピアノを弾いていると、「ジーン」「ビリビリ」「ジリジリ」といったピアノ以外の音が響くことがあります。
これは、共鳴音なのですが、どのような原因でこのような雑音がなるのでしょうか?
直し方、対処方法を説明していきます。
今回は、ピアノの共鳴音や雑音の原因は?直し方はどうやる?と題してお届けします。
ピアノの共鳴音や雑音の原因は?

ピアノを弾いていて、「ジリジリ」「ビービー」などと奇妙な雑音が聞こえてくると、気になって仕方がありませんよね。
共鳴、雑音というのは、実はかなり頻繁にあるピアノの不具合です。
なにが原因なのか、説明していきますね。
共鳴音・雑音の原因
共鳴音や雑音は、古いピアノに起こりやすいですが、新しめのピアノは起こらないということは決してありません。
この共鳴音や雑音は、ピアノ本体に原因があるとは限らず、ピアノ以外のピアノのまわりにある何かに原因がある場合もあるのです。
固有周波数
少し物理学の内容になるのですが、この世の全てのものには「固有の周波数」があり、近くで同じ振動数のものがなれば、共鳴して振動します。
例えば、ピアノで真ん中のドを鳴らした場合、似たような固有周波数をもったものがあり、震えやすいものがあれば、それが振動して、共鳴するのです。
お客様から「共鳴する時としない時がある」とご相談をいただくことがあります。
固有周波数は、温度によっても変化し、湿度によっても震えやすさが変わってくるため、共鳴する時としない時があるのです。
調律前は、共鳴もなにもなかったのに、調律した後、「ジーン」「ビリビリ」といった共鳴が出ることはよくあって、調律の後、ご連絡をいただくということもよくあります。
音の周波数が変わるため、共鳴が出てくるからなのですね。
どのような場所が共鳴しているのか
共鳴は、ピアノ本体に原因があるとは限らず、ピアノ以外のピアノのまわりにある何かに原因がある場合もあります。
私の経験上、ピアノ本体の原因が7~8割、ピアノ以外のものが2~3割程度といった具合です。
それぞれどのようなところが、共鳴しているのでしょうか?
ピアノ本体の共鳴
ピアノ本体の共鳴で、よくある例は以下の通りです。
蝶番


ピアノには、蝶番といって、譜面台や蓋などの開け閉め部分をつなぐ部品があります。
そこのネジや、蝶番の芯棒が共鳴していることがあります。
パネルの接触部分
パネルは、アップライトピアノの上部の大きな板と下部にある大きな板です。
特に下のパネルは、重さが軽量なものが多いのです。
その影響で、板とその接触面が震えるのです。
鍵穴



比較的新しいピアノだと、ピアノの鍵はついていないのですが、鍵がついているピアノがあります。
その鍵穴から共鳴していることがあります。
響板・響棒

ピアノには、響板というスピーカーの役割をする大きな木の部品があります。
響板は、長方形の柾目板(年輪が直線の板)を貼り合わせて、大きい板にしたものです。
弦振動を響板に伝えて、音を響かせます。
そのスピーカーの役割を担う響板ですが、経年劣化や過乾燥などの理由で、割れる(隙間ができる)ことがあります。

この影響で、ビリビリという共鳴につながることがあります。
割れていても、共鳴しないこともありますが、いずれ症状が出る可能性があります。
そして、響板を支える響棒という木材が貼り付けられていますが、その響棒がはがれてくることがあり、共鳴する場合があります。
響棒は、響板の梁の役割を担っています。
グランドピアノのペダルのボルトネジ
グランドピアノのペダルのボルトネジは、かなり緩みやすいです。
定期調律の際にしめていますが、緩んできます。
ピアノ以外のものの共鳴
ピアノ以外のものだと、なにが共鳴するのでしょうか?
よくある例を紹介していきます。
ピアノの上に置いているもの
共鳴の相談があれば、まずピアノの上になにかものを乗せていないかを確認します。
調律のために片付けるかと思いますが、共鳴のご相談がある場合は、そのままにしておいていただきたいです。
よくあるケースは、メトロノームや写真たてなどです。
ピアノの裏や下に落ちているもの
ピアノの裏や下にものが落ちていることは、意外に頻繁にあります。
アップライトピアノであれば、響板は裏側にありますので、響板に近くにあるものは、共鳴しやすいですね。
ピアノの近くの壁にかかっているもの
ピアノの近くにかかっているものといえば、額縁や時計などです。
これもよくあります。
照明器具
天井にある照明や、間接照明も共鳴することがあります。
その他
その他にも、カーテンレール、人形のガラスケース、ガラス戸のある本棚や食器棚も共鳴します。
今までにびっくり仰天した共鳴場所は、お部屋の出入り口のドアの蝶番(ヒンジ)!!!
これは探すのに本当に一苦労しました。
直し方はどうやる?

演奏中に共鳴音があると、気にしないで弾こうと思っても、なかなか厄介で気になるもの。
直し方はあるのでしょうか?
上記に記した、不具合の対象方法を紹介したいと思います。
共鳴音の直し方
共鳴音を直したいと思ったら、まず、どこからなっているかを詮索しなければなりません。
まず、共鳴音が金属音なのか、そうでないのかを判断します。
ピアノ内部なのか、外部なのかどうかも判断したいのですが、外部からの共鳴音をピアノに響いて、ピアノからもその音が聞こえてしまうことがあるので、難しいのです。
共鳴する音をならながら、あちこち手で押さえて、共鳴音がとまったところが原因なので、根気よく探し続けます。
ピアノから距離があるところだと、腕が届かず確かめようがないので、お客様にピアノの音をならしていただいて、お部屋の中で原因を探っていく場合もあります。
このように、共鳴や雑音は原因究明するのが、本当に大変で、時間がかかってしまうケースはよくあります。
こればかりは、調律師の技術うんぬんではなく、「勘」なのです。
ピアノ本体の共鳴の直し方
それでは、上記に上げたよく共鳴している場所の対処方法を説明していきます。
ピアノ内部のものは、基本的に調律師におまかせしてください。
故障の原因になることがあります。
蝶番
蝶番は、ネジがゆるんでそこから共鳴している場合、ネジを増し締め、バカネジになっている場合もあるので、埋め木をして締めなおします。
蝶番の芯棒が共鳴している場合もあります。
蝶番の芯棒にグリスを塗ったり、芯棒を少し折り曲げたりします
パネルの接触部分
パネルの接触部分が共鳴している場合は、共鳴している部分にフェルトなどを貼って対処します。
鍵穴のネジ
鍵穴のネジは、ネジを増し締めしたり、潤滑剤をつけることもあります。
響板・響棒
響板割れの場合は、基本的にオーバーホールといって、かなり大掛かりな修理をしなければなりません。
響板割れの修理は、割れているところに新たに木を埋めて修理しますが、弦とピンを外し、フレームを上げないとその修理に取り掛かることができないのです。
そのため、響板が割れていても、共鳴していない場合は、私は様子を見させていただいています。
共鳴が出てきている場合は、オーバーホールか、ピアノによっては買い替えをおすすめします。
グランドピアノのペダルのボルトネジ
ペダルのボルトネジが緩んで共鳴が発生しています。
ネジを締めなおします。
ピアノ以外のものの共鳴の直し方
ピアノ以外のものが共鳴している場合の対処法は以下の通りです。
ピアノの上に置いているもの
ピアノの上においているもの、メトロノームや写真たてなどが多いと先ほどお伝えしましたね。
一番早いのは、ピアノの上にものをおかないことです。
それが難しい場合は、ピアノの上に直にものを置いている場合、なにか柔らかい布(ピアノカバーやピアノのキーカバーなど)を下にかましてください。
置いている位置から少しずらせば、共鳴しなくなることもあります。
メトロノームのカバーからなっている場合もあります。
その場合は、カバーを外すなどしてください。
ピアノの裏や下に落ちているもの
ピアノの裏や下にものが落ちていて、共鳴している場合、ものを取り除くきます。
長い棒を使って、頑張って取り出します。
アップライトピアノの裏と壁の間に落ちて、床に落下すれば取り出せます。
が、以下のピアノの裏側の赤でかこったマーク位置に落下してしまうと、ピアノの設置いている状態によっては、ピアノを移動させないと、ものを取り出せないということもあります。

ものが落下するリスクがあるので、ピアノの上にものをおくことは、できるだけ避けていただきたいですね。
ピアノの近くの壁にかかっているもの
壁にかかっているもの、額縁や時計などが、共鳴している場合は、壁にかけているものを取り外すという選択肢が、一番手っ取り早いです。
少しかけている位置をかえるとなおったりしますが、再発する可能性はあります。
照明器具
照明器具が共鳴している場合は、照明の傘をしめなおすと、改善されることが多いです。
が、こちらも再発の可能性はあります。
まとめ
ピアノの共鳴音の原因についてのお話でした。
ピアノの共鳴、雑音の原因は、ある音を鳴らしたときに、その音と似たような固有周波数をもったもので、震えやすいものであれば、それが共鳴するということでした。
ピアノの内部のなにかということもあれば、ピアノ以外のお部屋の照明やピアノの上に乗せているなにかが原因であることもあります。
直し方は、共鳴している場所を探り当てて、その場所を共鳴しにくい状態にします。
ただしこれは本当に勘が頼りなので、調律師でも苦労することはあるのです。
共鳴が気になる場合は、ご一報いただければがんばります!
ひとり見つけることが難しい場合は、ご協力をお願いただくこともあるかと思いますが、どうかその時は、よろしくお願いいたします。
以上、ピアノの共鳴音や雑音の原因は?直し方はどうやる?と題してお届けしました。