ピアノの響板は、ピアノにとってとても重要な部品のひとつです。
その響板が割れてしまうことを、「響板割れ」と言いますが、響板割れするとどうなるのか、仕組みや修理費用の相場についても気になりますよね。
そして、響板とはいったいどんな素材でできているものなのでしょうか?
ベニヤ板の響板も一部ありますが…果たしてそれは、響板としてどうなのか。
響板のクラウンについても、詳しく紹介していければと思います。
今回は、ピアノの響板とは?割れと素材についても紹介!と題してお届けします。
目次
ピアノの響板とは?
ピアノの響板、聞いたことがあるという程度で、詳しくわからないという方が多いと思うので、詳しく紹介していきたいと思います。
響板とは?
ピアノの響板とは、先ほどもお話したように、ピアノにとってとても重要な部品です。
簡単に説明すると、ピアノのスピーカーの役割を担っています。
アップライトピアノでは背面に、グランドピアノではフレームの下にあります。
↑アップライトピアノを正面から見た写真です。
金色のフレームの裏側に響板があります。
↑アップライトピアノを裏側から見た写真です。
4本の柱の向こう側にある大きい木材が響板です。
↑グランドピアノの画像です。
銀色の細い弦の下に見えるのが響板です。
出典:https://jp.yamaha.com/products/musical_instruments/pianos/grand_pianos/cx_series/features.html
↑グランドピアノを下から見た写真です。
4本の柱の向こう側にある大きい木材が、響板です。
それでは、どのような仕組みでスピーカーの役割を果たしているのでしょうか?
響板の仕組み
まず、ピアノの音がなる仕組みですが、鍵盤を押すと、鍵盤から伝わった力が、ハンマーに伝わります。
そして、ハンマーが弦を打ち、弦が振動し、その振動が駒から響板へと伝えます。
響板が音を響かせて、音が空気中に広がります。
この響板がなければ、ピアノはものすごく小さい音しかなりません。
ピアノの響板割れと素材について紹介!
響板について理解を深めたところで、続いては、響板の素材やクラウンの仕組みなどについて紹介していけたらと思います。
響板割れになると、どうなるかについても説明します。
響板の素材
先ほど響板は、木材だとお話しましたが、音を響かせるための大事な役割を担っています。
なので、木材によって音のなりがずいぶんと変わるため、各メーカー木の種類にこだわっています。
よく使われる木材の種類としては、「エゾマツ」や「スプルース」が多いです。
振動させるための木材なので、柔らかい木材が使用されています。
ちなみに、エゾマツやスプルースは、ピアノの鍵盤部分にも使用されています。
響板に使用されるエゾマツやスプルースは、通常柾目板*が使用されます。
*柾目板…木材を中心付近を切った時に、表面に現れる木目のことです。直線の木目。逆に中心からずらして切ったときに表目に現れる木目は「板目」といいます。山のような形。
↓柾目板
↓板目板
なぜ、柾目板が使用されているのかというと、響板は振動を木目方向に伝達し、音を響かせるので、直線の木目の柾目板でないと音が響きにくいのです。
そして、響板の裏側には、響棒という棒状の部品が取り付けられていますが、響棒は、響板の木目と直角に取り付けられます。
響棒も響板と同じ材質が用いられることが多いです。
響棒は、響板の振動をさらに伝えるためと、クラウンという響板の微妙なそりを支えるためにあります。
クラウンは、後程詳しく説明します。
ベニヤ板の響板
音を広げるためのスピーカーの役割をする響板ですが、コストダウンのために、ベニヤ板でつくらていることがあります。
ベニヤ板だけの響板もありますが、ベニヤ板の上に、うすいエゾマツやスプルースの化粧板を貼ってあったりします。
音は、やはりペラペラで、キンキンと割れるような音がします。
頭痛がしてきそうな…は言い過ぎかもしれませんが、そういうピアノはおもちゃだという人もいるくらい、いいものではありません。
響板クラウン
クラウンは先ほど響棒の話の時に、出てきましたが、響板の微妙なそりのことです。
形が王冠に似ているから、クラウンと呼んでいるようです。
具体的に説明すると、微妙なそりをつくることによって、しなりやすく響板が振動しやすくなるためということと、弦からの圧力を支えるために、このような「そり」を施します。
弦やフレームなどを外した状態で、響板をたたくと、太鼓のように「ボーン」と音がなるんですよ。
おもしろいことに、ピアノの製造された年代などが違うだけ、その叩いたときの音の響き方が全然ちがいます。
バイオリンやチェロも中央部分が膨らんでいますよね。
ピアノの場合、バイオリンやチェロほど膨らみがありませんが、約1cmほど膨らみがあります。
響板割れ
ピアノのスピーカーの役割の響板ですが、木材ということもあり、割れてしまうことがあります。
どのように割れてしまうのか、割れるとどのような支障があるのでしょうか?
まず響板の構造を説明したいと思います。
響板の構造
響板は、アップライトピアノは、上はピンブロックあたりから、下は底のあたりまで、幅は、ピアノ本体の幅と同程度あります。
なので、ピアノの高さによって面積が変わります。
グランドピアノの場合は、奥行きによって響板面積が変わります。
この大きな板は、幅約15cm、厚さ10mmの長い柾目板を接ぎ合わせて、つくっています。
↑イメージこんな感じです。
木目に直角に貼られているのが響棒、駒の裏側に取り付けられているのが、響板ボタンといいます。
響板割れ
響板割れは、響板の接ぎ合わせている部分から割れてきます。
響板割れが起こると、致命的といわれることが多いです。
その理由は、やはりピアノの音を広げる部分なので、重要な役割を担っている部品だからです。
割れると、以下のような感じで裂けるように割れたり、亀裂が入ったりします。
こうなると、その割れた部分は振動しなくなってしまうので、音の広がりに影響します。
しかし、割れているだけで、雑音が出ていない場合、音を聞いた感じは、ほとんどわからない程度にしか、音の広がり方に変化はないかと思います。
やはり致命的なのは、雑音が出てくることです。
木と木がこすれあってしまう場合は、結構気になる雑音が発生します。
響板割れは響板割れでも、「めばり」といって、響板のつぎめが盛り上がっているだけの場合は、問題ないという場合が多いですよ。
(めばりから割れに発展してしまうこともあります。)
響板割れの修理
まず、響板割れを修理は、割れた部分に同じ材質の木を埋めるという方法で行います。
埋め木といえば、簡単にできそうな気がしますが、響板の埋め木かなり大掛かりな修理になります。
響板が割れている箇所によっては、鉄骨(フレーム)と弦があるので、それらを一度全て外す必要があります。
なので、響板修理をする場合、弦ピン交換もすることになることが多いです。
ごくたまに、雑音を止めるための応急処置として、ボンドなどの接着剤を流し込んでいるのを見ますが、あくまで応急処置にすぎません。
響板割れの修理費用
響板割れの修理の場合、オーバーホールということになります。
なので、安く見積もっても、縦型のアップライトピアノで、50万円~、グランドピアノで、70万円~という感じだと思います。
基本的に、ピアノを工房へ移動させてすることになるので、ピアノの運送費も必要と思っていた方がいいです。
髙橋ピアノ調律では、オーバーホールも承っていますが、金額は要見積もりとしています。
ピアノの状態などによって、一台一台値段設定を変えています。
可能な限り柔軟に、お客様のご予算に合わせて、どこまで修理をするのかなど、ご相談いたします。
ピアノの響板のまとめ
ピアノの響板とは、ピアノのスピーカーの役割をする、大きい木の板のことでした。
素材は、エゾマツやスプルースという柾目板が使用されることが多いです。
クラウンというそりが特徴ですが、クラウンは、響板の振動を増幅させるため、弦の圧力に耐えるためにあります。
コストダウンのために、ベニヤ板でつくられている響板のピアノもありますが、やはり音質が落ちます。
響板割れとなると、雑音が発生することがあるので、その場合修理が必要になります。
修理費用は、ほとんどの場合オーバーホールになるので、アップライトで50万円~、グランドで70万円~ぐらいが相場だと思います。
以上、ピアノの響板とは?割れと素材についても紹介!と題してお届けしました。