ピアノは湿気に弱いという話は、一度は聞いたことがあるという方は多いかもしれません。
では、ピアノが湿気の影響を受けるとどうなるのかご存じですか?
音が出ないなどという不具合は、湿気の影響からくるものなのでしょうか?
リビングにピアノを置いているとピアノに湿気の影響があるのかどうかも気になるところかと思います。
湿気の対策といえば、エアコンや除湿器、湿気取り…いろいろとありますが、ピアノにとってはどの方法が適切なのかを紹介していきたいと思います。
今回は、ピアノは湿気の影響を受けるとどうなる?おすすめの対策や音が出ない時の対処方法を紹介!と題してお届けします。
目次
ピアノの湿気の影響を受けるとどうなる?
ピアノが湿気の影響を受けると、具体的にどのようなことが起こるのでしょうか?
早速、説明していきたいと思います。
ピアノが湿気の影響を受けると…
湿気の多い場所にピアノがあると、不具合が起こりやすいです。
各部品の動きが鈍くなったり、金属類の錆び、木部にカビが発生させる原因になります。
それに、音を出しているハンマーもフェルトでできているので、湿気を含むと音がこもったような音になったりします。
なので、ピアノを湿気の多いところに置いておくと、部品が劣化しやすくなるため、ピアノの寿命が短くなることに繋がってしまいます。
リビングに設置している場合のピアノへの影響
リビングは、キッチンからの距離が近いことが多く、料理している時に発生する蒸気が、ピアノに回ってしまう可能性があります。
それと、一番影響することは、みなさん冬場によくされるお鍋。
食卓で煮込みながらお鍋をかこむことが多いかと思いますが、お鍋をする際は必ず蒸気が部屋中に蔓延します。
鉄板焼きも同様ですよね。
対策としては、蒸気が部屋にまわりそうなときは、ピアノカバー(オールカバー)をしてピアノに湿気がいかないように防ぐことです。
そして、乾燥した晴れた日などは、部屋の換気とともに、ピアノの屋根を解放して、ピアノの換気もしておくと安心です。
ピアノの最適湿度
ピアノにとって湿気が多いのは、湿度が何%で多いのでしょうか?
ピアノの最適な湿度は、40%~60%といわれているので、人間が気持ちよく過ごせる湿度と同じような感じですね。
なので、乾燥にもよくないということになります。
過乾燥の影響を受けると…
湿度が乾燥したところにピアノを置いていると、木材が収縮して、ピアノの部品が動く関節の部分がぐらついてしまったり、ネジ類が緩み雑音、共鳴の原因になってしまいます。
響板割れ
ピアノのスピーカーの役割を担っている「響板(響板)」という大きい木材の部品にも影響があります。
響板は、長い板を貼り合わせて大きな板になっていますが、その板の継ぎ目から割れてくることがあります。
響板割れは、過乾燥が原因でもありますし、温度や湿度変化の激しいところ、経年劣化などが原因となることもあります。
響板が割れると、最悪の場合は割れ目から雑音が出ることがあります。
雑音が出てきた場合は、大掛かりな修理が必要になります。
駒割れ
ピアノは、ハンマーで弦を打ち、弦を振動をさせ、その振動を響板に伝えて、音をならしています。
弦の振動は「駒」という木材でできた部品を経由して、響板へ振動を伝えています。
この駒が、過乾燥などの影響で割れることがあります。
ネット上では、響板割れに注意するように前に出てきますが、響板割れよりも、駒割れの方が頻度としては多いように思います。
そして、駒割れの方が影響が大きいと思っています。
駒割れすると、弦を支えているピンが弦を支えることができなくなるので、調律ができません。
すなわち、音が狂ったままになります。
おすすめの対策や音が出ない時の対処方法を紹介!
ピアノは、湿気が多いのも乾燥するのもよくないということでしたが、どのような対策をすればいいのでしょうか?
理想の湿度対策を紹介していきます。
おすすめの湿度対策
先ほど、ピアノにとって最適な湿度は、40~60%とお伝えしました。
この湿度、人間にとっても心地よい湿度ですよね。
なので、基本的には私たちが過ごしやすい湿度にしておけばいいということになります。
湿度ばかりお話をしていますが、温度も気にした方がいいです。
温度は、15~25度ぐらいが理想です。
これも人間が過ごしやすい温度です。
コンサートホールには、「ピアノ庫」といって、ピアノを保管する部屋があることが多いです。
ピアノ庫は、24時間同じ温度湿度をキープしている部屋になっています。
ピアノをいい状態で保管できるように、このような設備が整えられています。
「ピアノ庫」のような部屋が、一般家庭でもあれば一番理想といえるのですが、さすがに難しいと思います。
(スタインウェイなどの高級グランドピアノをお持ちの方は、ピアノ庫のような空調完備の部屋をあったりするのですが…すごいですよね。)
いろいろな方法を紹介していきますので、みなさんのできる範囲での対策をしてみてください。
エアコン
一番の理想は、やはり部屋ごと温度湿度を調整することです。
しかし、エアコンで完璧と思いたいのですが、実際に計測してみると、除湿できていなかったりすることが、結構多いです。
エアコンの「ドライ」や「除湿」にしていてもなのです。
温度はわりと正確な数値になるのですけどね。
なので、一度湿度計で実際の部屋の湿度を測ってみた方がいいですよ。
除湿機・加湿器
エアコンで除湿ができていない場合や、普段エアコンを使用していない場合でも、湿度が高い場合は、除湿機が必要です。
そして、暖房時に乾燥している場合や、床暖房の部屋にピアノを置いている場合、あるいは、普段部屋の中が乾燥気味の場合は、加湿器が必要です。
除湿機
除湿機には、種類が3種類ほどあります。
①コンプレッサー式…吸い込んだ湿気をコンプレッサーで冷やし、結露を発生させ水滴にして除湿。夏はよく効くが、冬は向いていない。省エネ。
②デシカント式…乾燥剤を使って、湿気を吸着させ除湿。ヒーターの熱によって、乾燥した空気を吹き出す。低音の冬でも効くが、消費電力が大きい。
③ハイブリッド式…コンプレッサー式とデシカント式の融合。夏も冬も除湿ができる。
除湿機の種類については、詳細は別の記事で紹介していますので、よろしければご覧ください。
それぞれでピアノの置いている部屋の除湿機が必要な季節が違うと思います。
除湿機はおそらく、梅雨~夏場にかけて必要ということが多いと思うので、夏によく効くコンプレッサー式かハイブリッド式が無難かなと思います。
おすすめの除湿機
コンプレッサー式ですが、1℃から除湿してくれるので、冬でも除湿できます。
湿度設定も可能なので、常時50%にしておけばピアノにも安心です。
衣類乾燥除湿機ですが、部屋の除湿も可能です。
ハイブリッド式の除湿機なので、夏も冬も大活躍です。
加湿器
加湿器にもいくつかあるので、種類を紹介します。
①気化式…水を含んだフィルターで風を送り気化させる。
②スチーム式…ヒーターで水を加熱し、蒸気で加湿する。
③ハイブリッド式…気化式とスチーム式の融合。フィルターに送る風をヒーターで加熱。
加湿器も必要な時期が、地域やお部屋の環境によって違うと思いますが、だいたいは冬場でしょう。
加湿器は、ピアノのために選ぶ場合、気化式かハイブリッド式を選んでください。
スチーム式は、結露の原因になりやすいので、使用しない方がいいでしょう。
おすすめの加湿器
気化式の加湿機です。
気温に合わせて、湿度を55~65%に保ちます。
気化ハイブリッド式で、湿度を40%~60%に保ってくれます。
パワフル加湿の場合ヒーターを使用ということで、ハイブリッドということですね。
エアコンや除湿機を使っても湿度が下がらない場合
エアコンや除湿機を使っても部屋の湿度が下がらない場合は、ピアノ専用の防湿機、ダンプチェイサーを取り付けるのがいいです。
ただ、個人的にダンプチェイサーを取り付けるのは、どうしてもという限りおすすめしていません。
熱を利用して湿度を調整するので、木材への影響が気になるからです。
乾燥剤はほぼ意味がない
湿気が多い場合、乾燥剤をすすめる調律師がよくいますが、乾燥剤の効果はほとんど期待できません。
ピアノには隙間がたくさんあるので、室内の空気が常に往来しています。
乾燥剤は、密閉された状態でないと効果が発揮されにくいです。
なので、乾燥剤の湿度対策は、気持ち程度と考えた方がいいと私は考えていますので、調律に伺った際も、乾燥剤を販売していません。
音が出ない時の対処方法
音が出ない時は、まず原因を探らないといけないのですが、それは調律師でないと見つけることはできないと思います。
なので、遠慮せず調律師に連絡をしてください。
音が出ないようにするには、やはり日ごろから最適な温度や湿度に保っておくことが一番大切です。
そして、よくピアノを弾くことも予防につながります。
まとめ
ピアノは湿気の影響を受けると、音が出ないなどの不具合が出たり、カビやサビが発生しやすくなり、状態が悪化することがあります。
対策としては、エアコンだけでは、湿度が下がっていない場合があるので、部屋の湿度を確認して、除湿機などを活用することが大切です。
リビングのピアノの湿度管理は、難しいですが、定期的に換気をするなど、できる限りピアノに負担のかからないようにしていただきたいです。
そして、ピアノは過乾燥もよくないので、特に冬場は乾燥にも注意が必要です。
気化式の加湿器の使用をおすすめします。
以上、ピアノは湿気の影響を受けるとどうなる?おすすめの対策や音が出ない時の対処方法を紹介!と題してお届けしました。