子供がピアノを習い始めたから、ピアノがほしいけど、自宅の練習に電子ピアノではダメなの?と心配している方いらっしゃるのではないでしょうか?
プロになるわけではないし、電子ピアノで十分だと思うんだけど…という方もいらっしゃるでしょう。
アップライトピアノと電子ピアノを比較しながら、違いを説明していきたいと思います。
調律師から見た電子ピアノのおすすめも紹介しますよ!
今回は、ピアノは電子ピアノではダメ?アップライトピアノと電子ピアノを比較して違いを紹介!と題してお届けします。
目次
ピアノは電子ピアノではダメ?
ピアノの練習で電子ピアノではダメなのか、結論から言うと、子供の練習用のピアノには、はっきり言っておすすめはできません。
電子ピアノとアコースティックピアノ(アップライトピアノやグランドピアノのこと)は、いろいろと差がありすぎるんですね。
昔に比べると、電子ピアノはタッチはアコースティックピアノに近づいてはきていますが、アコースティックピアノとは根本的に構造が異なりますので、全く別の楽器を弾いている感覚です。
というわけで、アコースティックピアノと電子ピアノの構造を比較していきます!
アコースティックピアノと電子ピアノの具体的な「差」は、音の出し方や表現力、弾き方の癖…などたくさんありますので、一つ一つ詳しく説明していきたいと思います。
アップライトピアノと電子ピアノを比較して違いを紹介
アップライトピアノと電子ピアノの違いは具体的にどんなことがあるのでしょうか?
詳しく見ていきましょう!
アコースティックピアノと電子ピアノの構造
まずアコースティックピアノ構造を説明していきたいと思います。
今回は、縦型のアップライトピアノを紹介します。
アップライトピアノの内部のアクション(部品)はこんな感じです。
こちらは、アップライトピアノのアクションを横から見た画像です。
出典:https://www.kawai.jp/support/buy/diff_up/
鍵盤を押すと力が加わり、その力がアクションへ、そしてハンマーへ伝わって、弦をたたき音をならしています。
対して電子ピアノの構造はこんな感じです。
こちらはカワイの電子ピアノの構造です。
出典:https://www.kawai.jp/product/cn29/
電子ピアノは、アップライトピアノとは全く別の仕組みのアクションを搭載していて、プラスチックの鍵盤をおもりなどを使って、重くしています。
上位機種になると、アコースティックピアノと同じように木製の鍵盤の仕様だったりして、タッチを近づけています。
画像からもわかるように、アコースティックピアノとは全く別のアクション構造ですので、タッチは似せてはありますが、実際に曲を弾いてみると、違和感があります。
アコースティックピアノと電子ピアノの音の出し方
アコースティックピアノは、鍵盤からの力がアクションを通じてハンマーへと伝わり、ハンマーが弦をたたくと音がなります。
すると、弦が振動し、その振動を響板という大きな板に伝え、音を響かせています。
電子ピアノは、鍵盤の下にセンサーが組み込まれていて、センサーが反応すると、サンプリングされた音源がスピーカーから聞こえてきます。
アコースティックピアノは、弦と響板があるため、弦による倍音の響きがあり、響板により音が豊かに広がります。
実際に弾き比べてみると、よくわかりますので、楽器店などで、確認してみるとわかりやすいかと思います。
アップライトピアノの仕組みについては、別記事で詳しく書いています。
よろしければ、ご覧ください。
電子ピアノとアコースティックピアノの差
電子ピアノとアコースティックピアノの差は具体的にどのようなことがあるのでしょうか?
詳しく見ていきましょう。
弾き方の癖
ピアノを習ったご経験のある方ならお分かりいただけるかと思いますが、ピアノを弾くときは、手を猫の手のように丸くして弾くと教えてもらいますよね。
指を立てて弾くと芯のあるきれいな音が出て、指を寝かせてひくと、頼りないそれなりの音しか出てくれません。
それに、早い音符のフレーズを弾くときに、指を寝かせて弾くと、指がスムーズ動かず音符の速さについていけません。
電子ピアノだと、指を寝かせて弾いてもいい音がなってしまうので、指を寝かせて弾く癖がついてしまうのです。
表現力
まず、表現力に差が出てきます。
電子ピアノは、簡単に言えば、鍵盤のスイッチを押せばだれがどう演奏しても、同じ音しななりません。
サンプリングされた音源しか出てくれないないのです。
サンプリングされた音源、すなわち、事前に誰かが弾いた音を録音した音がなるいうことです。
なので、音量の小さい大きいの差の区別しかできません。
対して、アコースティックピアノは、ハンマーで弦をたたいて音をならすので、いわば打楽器と同じなんですね。
なので、鍵盤を押す力加減や弾き方によって、強弱はもちろん、鋭い音や力強い音、優しい音など、音の種類を弾き分けることができ、手首を使いながらゆっくり鍵盤から指を離すことで、ふんわりと余韻を残すように音を止めることもできたりするです。
力加減や弾き方で無限の表現が可能なのです。
ダンパーペダル
右側のペダルのダンパーペダルは、ペダルを踏むと、音が伸びて、華やかに演奏できるペダルです。
電子ピアノは、同時に音を出すことができる数が限られているため、ダンパーペダルを踏んでもたくさんの和音を同時に鳴らすことはできません。
対して、アコースティックピアノは、ペダルを踏めば、弾いた音全てを伸ばしてくれます。
しかも、ペダルを踏むと全てのダンパー(弦の振動を止める部品)が一斉に弦から離れるので、弾いている音だけでなく、88個ある鍵盤の音全ての弦が共鳴し、倍音が響き渡ります。
そのため、うまくペダルを踏みかえないと、当然のことながら不協和音になってしまいます。
電子ピアノには、弦がないので、倍音は一切発生しませんし、同時に音を出せる数も限られているため、そこまで不協和音にはなりにくいのです。
すなわち、電子ピアノでダンパーペダルで演奏すると、不協和音がアコースティックピアノほど出てこないので、アコースティックピアノで不協和音になるペダルの使い方でも、電子ピアノだときれいに聞こえてしまうことがあります。
ペダルを踏み方でも響き方の違いもかなり大きいものがあります。
タッチ
あとは、やはりタッチ感。
正確に言えば、アップライトピアノとグランドピアノも構造が違うので、タッチの差はあるのですが、それよりも、電子ピアノとグランドピアノの方が差はかなり大きいです。
レットオフといって、鍵盤をゆっくり押し込んだときに何かにひっかかったような独特の感覚(クリック感)がアコースティックピアノにはあります。
電子ピアノも、10万円以上の機種だと搭載されていることが多いですが、安い電子ピアノの場合はチェックした方がいいでしょう。
その他、特に注意してもらいたい点は、「ピアノ」や「ピアニシモ」といって、音量を弱く演奏するというシーンが出てきます。
アコースティックピアノで弱い音を出そうと、鍵盤をそーっと押さえると音が抜けてしまうことありますよね?
力と勢いが弱すぎると、レットオフの影響で、ハンマーが弦に当たらないので、音が抜けるのです。
このような、アコースティックピアノで音が抜けるようなタッチでも、電子ピアノの場合、そーっと鍵盤を押してもセンサーは反応するので、音がなってしまいます。
このような小さい音を出す力加減というのは、本物のアコースティックピアノでないと習得しにくいです。
音量のバランス
音量を調整できるというのが電子ピアノのメリットですが、逆にこれが上達の弊害になってしまいます。
自宅で電子ピアノで音量を小さく演奏していると、レッスンに行った際にアコースティックピアノで弾いたときにどれぐらい音量が出るかわからず、強弱がつけられなかったり、左手と右手の音量のバランスが取れなくなるお子様がよくいらっしゃいます。
あと、思いっきり鍵盤を叩きつけるように弾く癖もつきやすいです。
このようなことは、後からなおそうと思っても、なおすのに時間がかかりますし、苦労したりします。
よくある電子ピアノのつまづき
上達してくるにつれて、電子ピアノでは物足りなくなってくる日は必ず来ます。
それは、お子様自身が気づかれることだと思います。
ピアノのレッスンというのは、自宅での毎日の練習が一番大事なのです。
ピアノの先生のピアノは、たいがいグランドピアノでしょう。
レッスンはだいたい週に1回で、まず、課題曲として宿題が出され、1週間でその課題曲を弾けるようにを自宅で練習します。
1週間後、練習した曲を弾いて先生に聞いてもらい、表現方法やつまづいたところの練習方法を教えてもらって、また1週間自宅で練習…というのが基本的です。
自宅で電子ピアノで練習しているときは、きれいに弾けるのに(サンプリングされた音源なので、誰が弾いてもきれいに聞こえるため)、レッスンへ行って、自宅で練習した表現をアコースティックピアノで弾こうと思っても、うまく弾けないということはよくあるのです。
やはり、努力して練習し、上手く弾けたときに褒めてもらったりして、喜びを感じると、練習も意欲的にするようになりますし、ピアノを続けやすくなります。
逆にいっぱい練習したのに、上手く弾けなくてつまづいてしまうと、ピアノを弾く楽しさがわからずやめてしまうということに繋がってしまいます。
続くか分からないものになるべくお金をかけたくないというお気持ちはすごくわかります。
が、そのような気持ちで電子ピアノを購入すると、「いつ辞めてもいい」という感覚を潜在的にでも持ってしまう可能性もありますよね。
アップライトピアノを買った場合には、「買ったからには続けさせねば」とご家庭の協力体制が強くなり、本人のやる気や継続率の向上に繋がる事が多いです。
そして、自宅のピアノとレッスンのピアノとの差がありすぎると、お子様も戸惑いますし、自分はピアノを弾けないと思い込んでしまいます。
趣味だから、楽譜が読めるようになれば…とお考えの方もいらっしゃるかと思います。
ですが、音色はなんでもいいというわけではないと思いますし、何といっても感性が育ち遅れてしまいます。
小さいお子様がピアノを習うということは、脳の働きがよくなり、集中力や暗記力を高めたり、根気よく練習するので、忍耐力を養うこともできます。
人が生きていくうえで、大切なことばかりです。
せっかくお月謝を払ってレッスンするからには、単にピアノを弾けるようになることだけでなく、どんどん上を目指せた方がいいと思いませんか?
電子ピアノのメリットデメリット
電子ピアノのメリットデメリットをまとめています。
確認していきましょう。
電子ピアノのメリット
・音量を調節でき、時間を気にせず練習できる
・軽量でコンパクト
・比較的リーズナブルな価格で購入できる
・メンテナンス費がかからない
・機能が多彩
・置き場所の移動が容易
やはり、手軽に購入できて、音量を調節できるという点は、メリットですよね。
電子ピアノのデメリット
・鍵盤のタッチが平坦
・音量音色のコントロールに限りがある
・指を伸ばして弾く癖がつきやすい→早い音符のフレーズで転ぶ
・サンプリングされた音源なので、どんな弾き方をしてもきれいな音がなってしまう→アコースティックピアノでうまく弾けない
・寿命がある(だいたい10年ぐらい。5~6年で故障した例も。)
・家電製品と同じなので、買取はしてもらえない(処分代がかかる)
電子ピアノは買取できると勘違いされている方は結構いらっしゃるのですが、電子ピアノは、家電製品と同じで消耗品扱いです。
売りたいと思うときは、フリマアプリなどを利用してください。
そして、電子ピアノは家電と同じように、モデルチェンジがあって、その都度部品も変わります。
故障の際、部品がなく修理ができない場合が多いです。
アップライトピアノのメリットデメリット
アップライトピアノのメリットとデメリットをまとめています。
確認していきましょう。
アップライトピアノのメリット
・タッチ感が繊細
・弦による共鳴、倍音により豊かな響きが得られる
・響板により、音が広がる
・音量、音色の幅が広く豊富な表現可能
・メンテナンス次第で、長期にわたり使用できる
・部品は全メーカーほぼ共通なので、部品交換などの修理が永久的に可能
・買取してもらえる(メーカーや年代によっては、値段がつかないこともあります)
電子ピアノと違うところは、タッチが正確で、音色の変化をつけることができることや、メンテナンス次第で長く使用できることなど、盛りだくさん!
メリットはとても多いです。
アップライトピアノのデメリット
・電子ピアノよるも大きく、重量がある
・音が大きい
・重量が重いため、置き場所を移動ができない
・定期的なメンテナンス(調律)が必要
音が大きいことに関して言えば、「消音ユニット」という機能をピアノに取り付けることができます。
消音ユニットは、アコースティックピアノの内部に、電子ピアノの機能を埋め込んで、アコースティックピアノでありながら、音を消して、ヘッドホンから電子音を流して演奏できる機能です。
基本的にどのピアノでも後付けすることができます。
消音ユニットに関しては、また別記事で詳しく紹介していきます。
電子ピアノもアップライトピアノも、メリットデメリットは様々あります。
住環境の関係で、どうしても電子ピアノでないとというご家庭もあるかと思いますので、消音ユニットなども含めてじっくりと検討するのがいいと思います。
ちなみに、私が以前働いていた会社では、調律の仕事の他にピアノ販売もしておりました。
ほとんどのお客様が電子ピアノ希望でしたが、上記の内容をしっかりとご説明してご理解していただき、うち7~8割のお客様がアップライトピアノを購入されました。
現物を見て、音を聴き比べてもらうと、みなさん響き方の差に驚かれて、アコースティックピアノに検討しなおすという方がほとんどでした。
私自身の本音も小さいお子様がピアノを始めることに際しては、アコースティックピアノの方が断然おすすめだと思っています。
ハイブリッドピアノ
ハイブリッドピアノとは、アコースティックピアノのハンマーアクションが搭載された電子ピアノです。
鍵盤のタッチ感は、アコースティックピアノそのものですが、弦は張られていないため、音は電子音が出ます。
電子音ですが、スピーカーがよく、立体感がある音がなるようです。
ただ、値段が安い機種でも30万円ほどします。
この値段であれば、中古のアップライトピアノを買えてしまう値段ですし、10年ほどで故障してしまうともったいないことになってしまうので、再検討を強くおすすめします。
おすすめの電子ピアノ
どうしても、住宅事情などでアコースティックピアノを置けないという方もいらっしゃるかと思います。
調律師である私のおすすめの電子ピアノをご紹介します。
KAWAI CAシリーズ
個人的に電子ピアノの中で一番タッチが近いと思う機種がこちらのカワイのCAシリーズです。
現行モデルはCA49です。(2020年9月現在)
通常、電子ピアノの鍵盤はプラスチックですが、こちらは、アコースティックピアノと同じように木製鍵盤が使用されています。
他のメーカーでは、白鍵は木製でも黒鍵はプラスチックを使用している場合がほとんどですが、カワイは、白鍵黒鍵ともに木製鍵盤です。
そのおかげか、タッチにしっかりとした重みがあり、アコースティックピアノに近いと感じさせてくれます。
上位機種のモデルだと、スピーカーの数が増えたりして立体感のある音が出るタイプもありますが、個人的には、電子ピアノにお金をかけてしまうのは、あまりおすすめできません。
高い機種を買ったからといって、電化製品ですので、長持ちするわけではありません。
10年前後で必ず寿命が来ますので、もったいないですよ。
効率的に練習しよう
電子ピアノを使っていたけど、物足りなくなって、アコースティックピアノを購入することになった方は、ぜひ、電子ピアノは手放さず、時間帯に合わせて使いわけて練習するといいですよ。
☆夜間の音をおさえたいときには、電子ピアノで譜読みし、曲をスラスラ弾けるように練習する。
☆昼間の時間に、アコースティックピアノで指の練習や表現の練習をする
このように、時間帯で使い分けると効率よく練習ができますね!
まとめ
子供の練習用のピアノで電子ピアノではダメなの?と悩んでいた方、少しは参考になりましたでしょうか?
アップライトピアノと電子ピアノを比較しながら違いをご紹介しました。
個人的にには、おすすめはできません。
どうしても、音の問題でアップライトピアノは置けないという方は、できれば、10万円以上の電子ピアノの購入を検討した方がいいでしょう。
以上、ピアノは電子ピアノではダメ?アップライトピアノと電子ピアノを比較して違いを紹介!と題してお届けしました。